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WTE Technology:廃棄物が生み出す水素社会への革命

エナウム株式会社の根幹の技術は マイクロエナジー社 橋本社長の開発したWTEシステムです。当社は橋本社長を取締役CTO および株主として迎え、本技術の本格的事業を推進します。

すでに開発済の技術

Tech
粉砕機

廃棄物の内容や投入方法に合わせた粉砕機を設計いたします。

Tech
ガス化炉

1tから10t/日の処理量に合わせたガス化炉をご用意いたします。

Tech
都市鉱山

ガス化残渣から電気炉を使用しレアメタルを取り出します。

Tech
スクライバー

生成ガス中の硫化物やハロゲン化物を取り除きます

Tech
発電 電力供給

発電量に合わせたディーゼル発電機です。

Tech
液相FT合成炉

生成ガスからSAFを生成します。

今後の研究開発テーマ

R&D
高収率 液相SAF触媒

収率をさらに改善するFT合成触媒を開発します。

R&D
高収率 気相(複相)SAF触媒

小型の気相反応 複相反応FT触媒を開発します

R&D
有機冷媒ガス生成

有機冷媒ガスを高効率で生成する合成方法を開発します。

R&D
FT合成反応熱発電

FT合成に伴う過剰発熱を電力に変換する装置・触媒を開発します。

R&D
装置・反応制御 AIの開発

装置のオペレーションを自動化・高精度制御化を行うAI制御を開発します。

R&D
リモートオペレーションシステムの開発

遠隔で、全国・全世界のWTEシステムを制御するシステムを開発します。

目次

投稿

WTEシステム開発物語

エナウムの根幹技術を開発した マイクロエナジー社が、どのような技術どのように開発 検証を行ってきたかについてのストーリーです。是非ご覧ください!

プロローグ:ゴミが燃料に変わる瞬間

神奈川県厚木市に、未来のエネルギー革命を静かに準備する技術者たちがいる。彼らが手がけるのは、一見すると魔法のような技術だ。都市ゴミや廃プラスチックを「燃やすことなく」水素に変換し、石油の代替燃料まで作り出してしまう。この技術の名前は「WTE(Waste To Energy)システム」。直訳すれば「廃棄物からエネルギーへ」だが、その本質は私たちのエネルギー観を根底から覆すものだった。

2025年の現在、私たちは複合的で深刻な地球規模の課題に直面している。一方では急激な経済発展に電力供給が追いつかず、都市部と農村部の地域格差が拡大している。石炭など化石燃料由来の発電所新設は環境問題により凍結され、ベースロード電源の確保が困難になっている。再生可能エネルギーの普及により不安定な電源が増加し、電力系統の安定性が脅かされている。

他方では、焼却によるCO2排出、広域収集運搬によるCO2排出、使用済みプラスチック処理、海洋プラスチック問題が深刻化している。埋立地に起因する悪臭や水質汚染、そして埋立地そのものの不足も限界に達しつつある。従来の焼却処理はCO2排出を増加させ、循環型社会の実現からは程遠い状況が続いている。

そんな中、株式会社マイクロ・エナジーが開発したWTEシステムは、これらの問題を一挙に解決する可能性を秘めている。しかし、この技術の真価を理解するためには、その背景にある深遠な化学反応と、20年以上にわたる開発の軌跡を詳しく見る必要がある。

第1章:水から生まれる水素の秘密-化学反応の深層

従来の常識を覆す化学メカニズム

WTEシステムの核心は、一般的な認識を根本から覆す化学反応にある。多くの人は「物質が内包する水素が出てくる」と考えがちだが、実際は全く違う。この技術では、ガス化剤として投入される「過熱水蒸気」と炭素分子(C)の反応により、水分子が分解されて水素が単独で発生する。つまり、生成される水素は「水由来」なのだ。

化学式で表すと「C + H2O → H2 + CO」という反応が起こる。炭素が水蒸気中の酸素を奪って一酸化炭素になり、残った水素が独立したガスとして生成される。この反応は1000度以上という高温無酸素雰囲気で行われ、燃焼プロセスを一切伴わないため、ダイオキシンなどの有害物質は発生しない。

この化学反応の詳細を理解するためには、反応の熱力学的側面を考察する必要がある。C + H2O → H2 + CO の反応は吸熱反応であり、約131kJ/molのエネルギーを必要とする。このエネルギーは外部から供給される熱により賄われ、反応温度を1000度以上に維持することで、反応の進行が促進される。

さらに重要なのは、この反応が可逆反応であることだ。温度と圧力条件を適切に制御することで、反応の平衡を水素とCOの生成側に移すことができる。WTEシステムでは、この平衡制御技術により、理論値に近い高い水素収率を実現している。

組成分析から見る原料の可能性

都市ゴミの組成を詳細に分析すると、木質系バイオマスとの類似性が明確になる。東京の都市ゴミ組成(有明清掃工場H25年度調査)では、水分29.8%、炭素分32.4%、酸素分26.6%、水素分4.4%、窒素分0.5%となっている。一方、木質系バイオマスでは水分26.5%、炭素分36.8%、酸素分32.3%、水素分4.4%、窒素分1.2%となっており、両者の組成が極めて類似していることが分かる。

この類似性は偶然ではない。都市ゴミの主要成分である紙類、木製品、食品残渣などは、基本的にはセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった木質系の有機化合物で構成されているためだ。これらの化合物は炭素、水素、酸素を主成分とし、WTEシステムのガス化反応に最適な原料となる。

実際の数値で見ると、10トンの都市ゴミをガス化した場合、約11,000Nm³の生成ガスが得られ、そのうち約5,500Nm³が水素ガスとなる。この水素ガスの濃度は52.7%に達し、世界トップレベルの性能を誇る。残りの組成は一酸化炭素25.2%、二酸化炭素16.7%、窒素4.25%、メタン0.38%となっている。

エネルギー収支の詳細計算

WTEシステムのエネルギー収支を詳細に検討してみよう。10トンの都市ゴミから得られる11,000Nm³の生成ガスの単位発熱量は2,154kcal/Nm³である。これにより、総発熱量は約24,240Mcalとなる。

このエネルギー量を電力に換算すると、発電効率30%として約10.6MWhの電力が得られる。しかし、システム自体の消費電力を差し引くと、外部供給可能な電力量は約8.5MWhとなる。これは日本の平均的な4人家族構成490世帯分の1日の電力消費量に相当する。

一方、BTL(Biomass to Liquid)燃料と発電を同時に行う場合、エネルギーの配分が変わる。この場合、約2,000Lの液体合成燃料と3.3MWhの電力を同時に創出することができる。液体燃料の発熱量を軽油相当として計算すると、約17,000Mcalのエネルギー量に相当し、残りの約7,000Mcalが電力として利用される計算になる。

第2章:徳島の森で証明された技術力-実証実験の詳細記録

6年間にわたる実証実験の全記録

2009年から2015年にかけて、徳島県那賀町の深い森の中で、この技術の真価が問われる実証実験が行われた。海拔300メートルの山間部に建設された実証施設は、100kg/hrの処理能力を持ち、1日2.4トンのバイオマスを処理できる規模だった。

この施設では、地元で発生する間伐材、製材残材、農業残渣などを原料として、連続的なガス化実験が実施された。実験開始当初は、原料の性状変動、装置の温度制御、ガス組成の安定化など、多くの技術的課題に直面した。しかし、2年間の運転データ蓄積と改良により、2011年頃から安定した運転が可能になった。

実証実験の中でも特筆すべきは、2014年2月11日から12日にかけて実施された30時間連続運転だった。この実験では、水素濃度が約60%、CO濃度が約30%という理想的な組成を安定して維持した。温度変動は±10度以内に制御され、ガス組成の変動も±2%以内という高い安定性を実現した。

長期運転データから見える技術の成熟度

30時間連続運転のデータを詳細に分析すると、WTEシステムの技術的成熟度の高さが明確になる。開始から6時間後に定常状態に達し、その後24時間にわたって安定した組成を維持した。水素濃度は58~62%の範囲で推移し、平均60.1%を記録した。CO濃度は28~32%の範囲で推移し、平均30.2%となった。

この数値は、水素とCOの合計が90%を超え、不活性なチッソ濃度が5%未満という、FT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)の理想的な反応比率H2:CO=2:1に極めて近い組成を実現している。この比率は、合成燃料製造において最も効率的とされる組成であり、WTEシステムが燃料合成に最適化された技術であることを示している。

さらに注目すべきは、システムの自動化レベルの高さだった。30時間の連続運転中、人的介入はわずか3回のみで、いずれも定期点検のためのものだった。原料供給、温度制御、ガス精製、発電システムの運転は全て自動化されており、無人運転に近い状態で安定した性能を維持した。

タールフリー技術の革新性

従来のガス化技術において最大の課題とされてきたのが、タールの発生だった。タールは有機化合物が不完全に分解された粘性の高い物質で、配管の詰まりや機器の汚損を引き起こし、長期連続運転を困難にしていた。

WTEシステムでは、独自に開発したガス化技術により、このタール問題を根本的に解決した。徳島県那賀町実証設備での測定では、タール含有量は13.0~14.0mg/Nm³という極低レベルを達成した。これは、従来技術の一般的なガス化方式と比較すると、ダウンドラフト式の100~150mg/Nm³、アップドラフト式の12,000mg/Nm³、流動床式の2,000mg/Nm³を大幅に下回る数値である。

このタールフリー技術の核心は、二段階ガス化プロセスにある。第一段階では600~700度の比較的低温でタールの前駆体となる揮発性有機化合物を分解し、第二段階では1000度以上の高温でこれらの分解産物を完全にガス化する。この段階的な分解により、タールの生成を根本から抑制している。

さらに重要なのは、ダイオキシンの測定結果だった。2013年3月の測定では、0.000091 ng-TEQ/m³Nという極めて低い数値を記録した。これは環境基準を大幅に下回る値であり、燃焼プロセスを伴わないガス化技術の環境安全性を明確に示している。

第3章:石油を超える合成燃料の誕生-BTL技術の詳細

フィッシャー・トロプシュ合成の現代的応用

WTEシステムが生成する水素とCOの混合ガスは、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成と呼ばれる化学反応により、石油代替の合成燃料に変換される。この反応は1925年にドイツの化学者フランツ・フィッシャーとハンス・トロプシュにより発見されたもので、一酸化炭素と水素から炭化水素を合成する反応だ。

化学式で表すと「nCO + (2n+1)H2 → CnH2n+2 + nH2O」となる。この反応により、メタン(CH4)からガソリン、軽油、重油に相当する様々な炭化水素を合成することができる。WTEシステムでは、触媒の選択と反応条件の制御により、主に軽油相当の炭化水素を優先的に生成する。

マイクロ・エナジー社では、富山大学との共同研究により、FT合成専用の触媒を開発した。この触媒は鉄系を基本とし、プロモーターとしてカリウムやアルミニウムを添加したもので、低圧での反応を可能にしている。従来のFT合成では20~30気圧の高圧が必要だったが、この新触媒により5~10気圧での反応が可能になり、設備コストの大幅な削減を実現した。

BTL燃料の品質分析と性能評価

WTEシステムで製造されたBTL(Biomass to Liquid)燃料の品質は、独立行政法人交通安全環境研究所での詳細な分析により確認されている。この分析は2013年から2015年にかけて継続的に実施され、燃料としての実用性が厳格に評価された。

燃料性状の比較データを見ると、BTL燃料の優秀さが明確になる。低位発熱量は軽油の43.3MJ/kgに対してBTL燃料は43.0~43.1MJ/kgとほぼ同等の値を示している。密度は軽油の802kg/m³に対してBTL燃料は799~827kg/m³と適正範囲内にある。

特に注目すべきはセタン指数(着火性の指標)だった。軽油の59.9に対してBTL燃料は71.2~78.4という高い値を示し、優れた着火性を持つことが確認された。動粘度は軽油の2.20mm²/sに対してBTL燃料は3.10~5.70mm²/sとやや高めだが、実用上は問題のないレベルだった。

環境性能の面では、硫黄分がゼロという大きな利点がある。軽油では10ppm未満の硫黄分が含まれているが、BTL燃料では検出限界以下となっており、SOx(硫黄酸化物)の排出がない。これにより、排ガス後処理装置の負荷軽減と長寿命化が期待できる。

実用化への道のり-長期使用試験の結果

BTL燃料の実用性は、徳島県那賀町での長期使用試験により実証された。2010年から2015年にかけて、農機具、公用車、発電機など多様な用途でBTL燃料が使用され、その性能と耐久性が評価された。

農業用トラクターでの使用試験では、100%BTL燃料での連続運転を実施した。500時間の運転後にエンジンを分解点検したところ、燃焼室、ピストン、バルブなどに異常な摩耗や堆積物は認められなかった。燃料系統の部品についても、腐食や劣化は見られず、長期使用における信頼性が確認された。

公用車での試験では、小型トラックに100%BTL燃料を使用し、1年間で約15,000kmの走行試験を実施した。燃費は軽油使用時と比較して約3%の向上が見られ、これはBTL燃料の高いセタン指数による燃焼効率の改善によるものと考えられる。排ガス分析では、NOx(窒素酸化物)は軽油と同等、PM(粒子状物質)は約20%の削減が確認された。

発電機での使用試験では、50kW級のディーゼル発電機で連続500時間の運転を実施した。発電効率は軽油使用時と同等の35%を維持し、騒音レベルも変化は見られなかった。メンテナンス性の面でも、オイル交換間隔の延長が可能であることが確認された。

収率と経済性の分析

10トンの木質バイオマスから約2000LのBTL燃料が生産可能であることが実証試験により確認されている。これは重量換算で約20%の収率に相当し、化学工学的には優秀な数値だ。エネルギー収支の観点から見ると、原料バイオマスの持つエネルギーの約60%がBTL燃料として回収され、残りの40%は電力や熱として回収される。

経済性の分析では、原料調達コスト、設備運転コスト、人件費などを総合的に評価した。2015年時点での試算では、BTL燃料の製造コストは1リットルあたり約120円となり、当時の軽油価格110円と比較すると若干高コストだった。しかし、炭素税や環境税などの政策的な後押しがあれば、十分に競争力を持つ価格水準だった。

さらに重要なのは、スケールメリットによるコスト削減の可能性だった。実証設備の100kg/hr規模から1,000kg/hr規模にスケールアップすることで、設備の単位処理量あたりのコストは約30%削減される試算となった。量産効果により、BTL燃料の製造コストは1リットルあたり約85円まで削減可能と予測された。

第4章:技術の社会実装-コンテナに収まる発電所

防衛省との共同研究から生まれた移動型システム

2021年、WTE技術は新たな段階に入った。防衛省技術研究本部との共同研究「車載型バイオマス発電の可能性検討に関する研究」を経て開発された40フィートコンテナ収納タイプのWTEシステムの完成だ。この研究は技報7157号として正式に発行され、災害時や辺境地での移動型電源としての可能性が高く評価された。

このシステムの開発背景には、東日本大震災での教訓があった。大規模災害時には、既存の電力インフラが長期間にわたって機能停止し、避難所や復旧作業現場での電力確保が困難になる。従来の移動型発電機は燃料の継続的な供給が必要で、燃料輸送路の確保が課題となっていた。

WTEシステムであれば、現地で発生する災害廃棄物や倒木などを燃料として利用できるため、外部からの燃料供給に依存しない自立型の電源システムとして機能する。さらに、廃棄物の処理と電力供給を同時に行えるため、災害復旧の効率化にも貢献できる。

システム設計の詳細仕様

40フィートコンテナ収納タイプのWTEシステムは、長さ12.2m、幅2.44m、高さ2.59mの標準的な海上コンテナサイズに収められている。総重量は約25トンで、大型トレーラーでの輸送が可能だ。設置作業は4名の作業員で約半日で完了し、運転開始まで2日間という短期間での稼働が可能となっている。

システムの構成は、前処理装置、ガス化炉、ガス精製装置、発電機、制御装置から成り立っている。前処理装置では原料の破砕・乾燥を行い、含水率30%以下、粒径5mm以下に調整する。ガス化炉は電気炉方式を採用し、外部からの電力供給により1000度以上の高温を維持する。

ガス精製装置では、生成ガス中の水分、タール、微粒子を除去し、発電機で使用可能な清浄なガスを製造する。発電機は内燃機関式とSOFC(固体酸化物燃料電池)式の2種類が選択可能で、用途に応じて最適なシステムを構成できる。

制御装置は完全自動化されており、原料投入から電力出力まで無人での運転が可能だ。遠隔監視システムも組み込まれており、インターネット経由での運転状況監視とトラブル診断が可能となっている。

性能仕様と経済性の詳細

このシステムの処理能力は日量1~2.5トンで、原料の種類と性状に応じて処理量を調整できる。最小構成の1トン/日システムでは、定格出力46kW、システム消費電力18kW、外部供給可能電力28kWとなる。これは約60世帯分の電力需要に相当する。

2.5トン/日システムでは、定格出力100kW、システム消費電力40kW、外部供給可能電力60kWとなり、約110世帯分の電力需要をカバーできる。さらに大型の10トン/日システムでは、定格出力440kW、外部供給可能電力264kWと、約490世帯分の電力を供給可能だ。

熱利用についても詳細な仕様が設定されている。1トン/日システムでは日量238,392kcal、2.5トン/日システムでは日量520,128kcalの利用可能熱量を創出する。この熱は給湯、暖房、乾燥などの用途に利用でき、エネルギー利用効率の向上に貢献する。

第5章:二段ガス化システム-都市ゴミ処理の革新

都市ゴミの特性と処理上の課題

都市ゴミの処理には、バイオマスとは異なる特有の課題がある。第一に、組成が極めて不安定で、プラスチック、紙、繊維、金属、ガラス、食品残渣など多様な素材が混在している。第二に、含水率が季節や地域により大きく変動し、30~60%の範囲で推移する。第三に、塩化ビニルなどの塩素系プラスチックが含まれており、ダイオキシンや塩化水素ガスの発生リスクがある。

従来の焼却処理では、これらの課題に対して高温燃焼(850度以上)と排ガス処理装置により対応してきた。しかし、燃焼プロセスでは必然的にCO2が発生し、排ガス処理には大量のエネルギーと薬剤を消費する。また、焼却残渣の埋立処分が必要で、循環型社会の理念からは程遠い処理方法だった。

WTEシステムでは、これらの課題を「炭素化処理」という前処理技術で根本的に解決した。炭素化処理は、酸素の存在しない雰囲気下で300~500度の比較的低温で有機物を熱分解する技術で、原理的には古来からの「炭焼き」技術の現代的応用だ。

炭素化処理の技術的詳細

炭素化処理装置は、回転キルン式を採用している。長さ10m、直径2mの回転ドラムが毎分1回転の速度で回転し、内部に投入された都市ゴミを均一に加熱する。加熱は外部の燃焼器により行われ、ドラム外周から間接的に熱を供給する。

処理温度は段階的に上昇させる。まず200度で水分を蒸発させ、次に300度で揮発性有機化合物を分解し、最終的に450度で固定炭素を残す。この温度プロファイルにより、原料中の有機物を段階的に分解し、最終的に炭素分のみを残す。

炭素化処理により、都市ゴミの重量は約30%に減量し、体積は約25%に減容する。含水率は5%以下まで低下し、発熱量は2倍以上に向上する。さらに重要なのは、塩素系化合物の大部分が揮発性ガスとして分離されることで、後段のガス化工程でのダイオキシン生成リスクが大幅に低減されることだ。

炭素化処理で発生する揮発性ガスは、燃焼器で完全燃焼させてから排出する。燃焼温度を850度以上に維持することで、ダイオキシンの分解を確実に行う。排ガスは活性炭吸着と湿式洗浄により浄化され、環境基準を十分に満たすレベルまで清浄化される。

ガス化工程との連携システム

炭素化処理により生成された炭素質原料は、コンベアシステムによりガス化装置に自動供給される。炭素質原料は粒径が均一で流動性に優れているため、ガス化装置への供給が安定し、ガス化反応も均一に進行する。

ガス化装置では、炭素質原料と過熱水蒸気の反応により、水素とCOを主成分とする合成ガスを生成する。炭素化処理により不純物が除去されているため、タールの発生は極めて少なく、ガス精製装置の負荷も軽減される。

生成ガスの組成は、水素55~60%、CO 28~32%、CO2 8~12%、N2 3~5%という高品質なものとなる。この組成は、発電用としても燃料合成用としても最適で、用途に応じてガスの利用方法を選択できる。

さらに、炭素化工程とガス化工程で発生する排熱は、相互に有効利用される。炭素化工程の排熱はガス化装置の予熱に使用され、ガス化工程の排熱は炭素化装置の加熱に利用される。この熱統合により、システム全体のエネルギー効率が大幅に向上する。

分散配置による都市ゴミ処理の革新

WTEシステムの二段構成は、都市ゴミ処理システム全体の革新を可能にする。従来の集中処理方式では、広域からゴミを収集して大型焼却施設で処理していたが、これには大量の収集運搬コストとCO2排出が伴っていた。

WTEシステムでは、炭素化装置を都市ゴミ発生現場に分散配置し、ガス化発電装置を地域の拠点に設置する分散処理方式が可能だ。例えば、大型商業施設、学校、病院などに小型の炭素化装置を設置し、そこで生成された炭素質燃料を地域の発電所に集約する。

この方式により、ゴミの収集運搬距離が大幅に短縮され、運搬コストとCO2排出が削減される。さらに、炭素化処理により重量と体積が大幅に減少するため、運搬効率も向上する。腐敗や悪臭の問題も解決され、衛生環境の改善にも貢献する。

離島のように発生量が少ない地域では、炭素化装置のみを設置し、生成された炭素質燃料を本土の処理施設に輸送する方式も考えられる。炭素質燃料は長期保管が可能で、輸送に適した形状であるため、物流システムの柔軟性が大幅に向上する。

第6章:地域エネルギー自立への道筋-循環型社会の実現

エネルギー地産地消の新モデル

WTEシステムが描く未来像は、地域社会のエネルギー自立だ。これまで地域社会はエネルギーの供給を外部に依存し、消費するだけの受動的な役割だった。しかし、この技術により、地域の持続可能な資源を利用して、自らが必要とするエネルギーを電気、熱、液体燃料という形態で創り出すことが可能になる。

この概念を具体的に理解するため、人口1万人の地方都市を想定したシミュレーションを行ってみよう。人口1万人の都市では、1日あたり約10トンの生活ゴミが発生する。これに農業残渣、森林間伐材、食品加工残渣などを加えると、日量約15トンの有機性廃棄物が利用可能となる。

15トンの有機性廃棄物をWTEシステムで処理すると、約16,500Nm³の合成ガスが生成される。このガスを全量発電に使用した場合、約15.9MWhの電力が得られ、システム消費電力を差し引いても約12.8MWhの電力を外部供給できる。これは約735世帯分の1日の電力消費量に相当し、人口1万人の都市の住宅部門電力需要の約80%をカバーできる計算になる。

一方、合成ガスの一部を燃料合成に回した場合、日量約3,000Lの液体燃料と約5MWhの電力を同時に創出できる。液体燃料は農機具、公用車、緊急車両などの燃料として使用し、電力は公共施設や重要インフラの電源として利用する。この方式により、エネルギーの完全自給自足が可能になる。

経済効果と雇用創出の詳細分析

エネルギーの地産地消は、単なる技術的な話ではなく、地域経済に大きなインパクトを与える。従来のエネルギー供給システムでは、化石燃料の購入費として地域の富が域外に流出していた。人口1万人の都市では、年間約2億円の電力・燃料費が域外に支払われている計算になる。

WTEシステムの導入により、この支出の大部分を地域内に還流させることができる。設備の運転維持費、原料調達費、人件費などは全て地域内で発生する経済活動であり、地域内での資金循環を創出する。年間約1.5億円の経済効果が見込まれ、地域内総生産の約1%向上に相当する。

雇用創出効果も大きい。WTEシステムの運転には、原料調達・前処理、システム運転、メンテナンス、燃料配送などの業務が発生し、直接雇用として約20名、関連産業への波及効果を含めると約50名の雇用創出が期待できる。これは人口1万人の都市では約1%の雇用創出効果に相当し、地域経済の活性化に大きく貢献する。

さらに重要なのは、技術者や研究者の地方定着効果だ。WTEシステムの運転には一定の技術力が必要で、若い技術者の雇用機会を創出する。これにより、地方からの人口流出を抑制し、持続可能な地域社会の形成に貢献する。

環境負荷削減効果の定量評価

WTEシステムの環境負荷削減効果を定量的に評価してみよう。15トン/日の有機性廃棄物を従来の焼却処理で処理した場合、約45トンのCO2が排出される。一方、WTEシステムでは燃焼プロセスを伴わないため、直接的なCO2排出はない。

ただし、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から、システム製造時、運転時、廃棄時のCO2排出を総合的に評価する必要がある。詳細な計算では、WTEシステムの年間CO2排出量は約2,000トンとなり、従来焼却処理の約16,000トンと比較して87%の削減効果がある。

水資源への影響も大幅に改善される。従来の焼却施設では冷却水として大量の水を消費し、排水処理も必要だった。WTEシステムでは水の使用は過熱水蒸気のみで、循環利用により水消費量を従来の10分の1以下に削減できる。

大気汚染物質の排出も大幅に削減される。ダイオキシン、SOx、NOx、PMなどの排出は、従来焼却処理と比較して90%以上の削減が可能だ。これにより、地域の大気環境の改善と住民の健康増進に貢献する。

第7章:技術の信頼性を支える実績-20年間の開発軌跡

公的機関による技術認定の詳細

WTEシステムの開発には、2003年から2014年にかけて経済産業省、環境省、農林水産省、防衛省から総額9億2300万円の公的補助金が投入された。これは単なる研究開発費の助成ではなく、技術の将来性と社会的意義が厳格な審査により公的に認められた証拠といえる。

最初の大型プロジェクトは、2003年の経済産業省NEDO事業「ガス化発電システムの開発」だった。この事業では、基本的なガス化技術の開発と小型実証機の製作が行われた。2年間の研究開発により、タールフリーガス化の基本原理が確立され、特許第5527743号として登録された。

2009年には複数の大型実証事業が採択された。経済産業省事業として徳島県那賀町、山梨県山梨市、鹿児島県姶良町でのBTLシステム実証が開始された。これらの事業では、異なる地域条件下での技術適用性が検証され、システムの汎用性が確認された。

2011年から2014年にかけての経済産業省NEDO事業「BTLシステム FT合成触媒の低圧化開発」では、富山大学との共同研究により革新的な低圧FT合成触媒が開発された。この触媒により、従来20~30気圧必要だったFT合成反応が5~10気圧で可能になり、設備コストの大幅な削減が実現された。

防衛省技術研究本部との共同研究

特に注目すべきは、2013年から2014年にかけて実施された防衛省技術研究本部との共同研究「車載型バイオマス発電の可能性検討に関する研究」だ。この研究は技報7157号として正式に発行され、移動型エネルギーシステムとしての可能性が高く評価された。

防衛省の関心は、災害派遣や辺境地での任務において、現地で調達可能な燃料を使用して電力を確保する技術にあった。従来の移動型発電機は軽油やガソリンなどの精製燃料が必要で、燃料輸送の負担が大きかった。WTEシステムであれば、現地の木材、紙、食品残渣などを燃料として利用でき、兵站負担の大幅な軽減が期待できた。

研究では、40フィートコンテナに収納可能な移動型システムの設計が行われた。重量25トン以下、設置時間4時間以内、無人運転24時間以上という厳しい要求仕様に対して、技術的な実現可能性が詳細に検討された。最終的に、すべての要求を満たすシステム設計が完成し、プロトタイプの製作に至った。

産学連携体制の充実

WTEシステムの技術開発は、充実した産学連携体制に支えられている。東京工業大学発ベンチャーの称号「第17号」(平成15年6月)を取得したマイクロ・エナジー社は、複数の大学との継続的な共同研究を実施している。

京都大学芦田名誉教授研究室では、ガス化反応の基礎メカニズムの解明が行われている。分子レベルでの反応解析により、タールフリー反応の原理が解明され、反応条件の最適化が図られた。富山大学椿研究室では、BTL用FT合成触媒の開発が継続されており、触媒性能の向上と長寿命化の研究が進められている。

東京工業大学玉浦研究室では、バイオマス水素キャリアの開発が行われている。水素の貯蔵・輸送技術の開発により、WTEシステムで生成した水素の利用範囲拡大が期待されている。産業技術総合研究所(つくば)では、システム全体の最適化とライフサイクルアセスメントの研究が実施されている。

技術顧問団には、三菱化工機OB、三菱化学OBなど25名の産業界経験者が参画している。これらの顧問により、実用化に向けた技術課題の解決と品質管理体制の確立が図られている。

第8章:世界との技術比較-圧倒的な優位性の源泉

国際技術比較の詳細分析

WTEシステムの技術的優位性を理解するためには、世界の先進的なガス化技術との詳細な比較が必要だ。国際比較の対象として、ドイツのCHOREN社、カナダのENERKEM社、イタリアのTPS社、スイスのFORTER WHEELER社などの技術を選定し、ガス組成、発熱量、タール含有量などの指標で比較評価を行った。

水素濃度において、WTEシステムの優位性は圧倒的だ。平均値52.7%、チャンピオンデータ66.5%に対して、CHOREN社37.2%、ENERKEM社12.0%、TPS社8.6%となっている。この差は使用する酸化剤の違いに起因している。CHOREN社は純酸素を使用するため高品質なガスが得られるが、酸素製造のためのエネルギーコストが大きい。ENERKEM社やTPS社は空気を酸化剤として使用するため、窒素希釈によりガス品質が低下している。

WTEシステムでは過熱水蒸気を酸化剤として使用することで、窒素の混入を抑制しながら高品質なガスを製造している。これは技術的に極めて困難とされていた課題であり、独自のガス化炉設計と反応制御技術により実現された。

一酸化炭素濃度においても、WTEシステムは25.2%と適正な値を示している。CHOREN社の36.4%は高すぎ、ENERKEM社の15.0%、TPS社の8.8%は低すぎる。WTEシステムの水素とCOの比率(H2:CO = 約2:1)は、FT合成の理想的な反応比率に極めて近く、燃料合成において最高の効率を実現できる。

低位発熱量の国際比較

低位発熱量(LHV:Lower Heating Value)は、ガス化技術の総合的な性能を示す重要な指標だ。WTEシステムの2,154kcal/Nm³は、国際的に見ても最高水準の値となっている。

CHOREN社の2,069kcal/Nm³は純酸素使用により高い値を実現しているが、酸素製造エネルギーを差し引いた正味のエネルギー効率では、WTEシステムが上回る。ENERKEM社の1,106kcal/Nm³、TPS社の1,044kcal/Nm³は、空気希釈による窒素の影響で低い値となっている。

発熱量の高さは、発電効率の向上、燃料合成効率の向上、設備のコンパクト化などの利点をもたらす。同じ電力を得るために必要なガス量が少なくなるため、ガス精製装置、配管、燃焼器などの設備を小型化でき、設備コストの削減に直結する。

タール含有量の国際比較

タール含有量は、ガス化技術の実用性を左右する最重要指標の一つだ。WTEシステムの13.0~14.0mg/Nm³という値は、国際的に見ても極めて優秀で、「タールフリー」と呼ぶに相応しいレベルだ。

従来技術では、ダウンドラフト式100~150mg/Nm³、アップドラフト式12,000mg/Nm³、流動床式2,000mg/Nm³と、いずれも高い値となっている。これらの技術では、タール除去のための追加的な設備が必要で、システムの複雑化とコスト増加を招いていた。

WTEシステムのタールフリー技術の核心は、段階的な温度制御にある。第一段階での低温熱分解により揮発性有機化合物を制御的に分解し、第二段階での高温ガス化により残留有機物を完全にガス化する。この二段階プロセスにより、タールの生成を根本から抑制している。

運転安定性の国際比較

長期連続運転の安定性は、実用技術として極めて重要な要素だ。WTEシステムでは、徳島実証設備での30時間連続運転において、ガス組成の変動が±2%以内という高い安定性を実現した。

国際的に見ると、多くのガス化技術では5~10%の組成変動が一般的で、WTEシステムの安定性は際立っている。この安定性は、下流の発電装置や燃料合成装置の安定運転に直結し、システム全体の信頼性向上に大きく貢献している。

安定性の要因として、原料の前処理技術、ガス化炉の温度制御技術、自動化システムの高度化が挙げられる。特に、炭素化前処理により原料性状を均一化することで、ガス化反応の安定化が図られている。

第9章:エネルギー革命への展望-2030年代の社会像

水素エネルギー社会の実現に向けて

WTEシステムが本格普及する2030年代には、水素エネルギー社会の実現が大きく前進すると予想される。現在、水素社会の実現に向けた課題として、水素の製造コスト、貯蔵・輸送技術、利用インフラの整備が挙げられているが、WTEシステムはこれらの課題解決に大きく貢献する可能性を持っている。

水素の製造コストについて、現在主流の水電解では1Nm³あたり約100円のコストがかかっている。WTEシステムでは廃棄物を原料とするため、原料コストが大幅に削減され、1Nm³あたり約30円-50円程度での水素製造が可能と試算されている。この価格競争力により、水素の大量普及が現実的になる。

水素の貯蔵・輸送についても、WTEシステムは分散配置が可能なため、消費地近くでの水素製造により輸送距離を短縮できる。さらに、生成した水素を一旦液体燃料に変換し、利用時に改質により再び水素を取り出すという「液体水素キャリア」の概念も実用化が期待されている。

SOFC(固体酸化物燃料電池)との連携

WTEシステムで生成される高品質な水素・CO混合ガスは、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell:固体酸化物燃料電池)との相性が極めて良い。SOFCは800~1000度の高温で動作する燃料電池で、水素だけでなくCOも直接燃料として利用できるため、WTEシステムの生成ガスを前処理なしで使用できる。

SOFCの発電効率は55~60%と極めて高く、従来の内燃機関式発電機の35~40%を大幅に上回る。WTEシステムとSOFCを組み合わせることで、廃棄物から電力への総合変換効率50%以上という高効率システムの構築が可能になる。

さらに、SOFCは発電と同時に800度以上の高温排熱を発生するため、この排熱をWTEシステムのガス化工程に利用することで、システム全体のエネルギー効率をさらに向上させることができる。このような統合システムにより、エネルギー利用効率70%以上の超高効率システムの実現が期待されている。

水素ガスタービンとの連携展開

三菱重工業、川崎重工業などの重工業メーカーでは、水素専焼ガスタービンの開発が進められている。これらのガスタービンは100%水素燃料での運転が可能で、CO2排出ゼロの発電システムとして注目されている。

WTEシステムで生成される水素リッチガスは、膜分離技術により高純度水素として精製することで、これらの水素ガスタービンの燃料として利用できる。大型ガスタービンでは数十MW級の発電が可能で、地域の基幹電源としての役割を果たすことができる。

膜分離による水素精製では、WTEシステムの生成ガス(水素濃度55~60%)から99%以上の高純度水素を回収できる。分離後に残るCOリッチガスも有効利用され、工業用燃料や化学原料として活用される。このように、生成ガスの全成分を無駄なく利用する循環システムの構築が可能だ。

自動車産業との連携可能性

トヨタ自動車の「MIRAI」に代表される燃料電池車(FCV)の普及拡大により、水素ステーションの整備が進んでいる。現在の水素ステーションでは、化石燃料由来の水素が主に使用されているが、WTEシステムによるカーボンニュートラル水素への転換が期待されている。

WTEシステムで製造した水素を水素ステーションに供給することで、真の意味でのゼロエミッション交通システムが実現できる。さらに、大型商業施設や物流拠点にWTEシステムを設置し、施設で発生する廃棄物から水素を製造して燃料電池車に供給する「循環型水素ステーション」の概念も検討されている。

燃料電池トラック、燃料電池バスなどの大型車両では、1日あたり数十kgの水素が必要となる。WTEシステム(10トン/日規模)では、日量約120kgの水素製造が可能で、大型車両10~15台分の燃料を供給できる計算になる。

化学工業との連携展開

WTEシステムで生成されるCOは、化学工業において重要な基礎原料だ。COはメタノール合成、アンモニア合成、各種化学品の合成に使用され、従来は化石燃料から製造されていた。WTEシステムのCOを化学原料として利用することで、化学工業のカーボンニュートラル化に貢献できる。

メタノール合成では、CO + 2H2 → CH3OH の反応により、WTEシステムの生成ガス(H2:CO = 2:1)を直接原料として利用できる。メタノールは燃料としても化学原料としても多用途に利用でき、水素キャリアとしての機能も期待されている。

さらに発展した応用として、COと水素から直接プラスチック原料を合成する技術も開発されている。この技術により、廃プラスチックを原料として新しいプラスチックを製造する「ケミカルリサイクル」の完全循環システムが実現できる。

第10章:実装に向けた課題と解決策

技術的課題とその解決アプローチ

WTEシステムの本格的な社会実装に向けては、いくつかの技術的課題が残されている。第一に、大型化に伴うスケールアップ技術の確立だ。現在の実証設備は日量2~10トン規模だが、都市部での本格導入には日量100~1000トン規模への拡大が必要となる。

スケールアップの課題として、ガス化炉の大型化に伴う温度分布の均一化、大流量ガスの精製技術、大容量発電システムとの連携などが挙げられる。これらの課題に対して、CFD(数値流体力学)解析による炉内流動最適化、モジュール化による段階的拡大、多系列並列運転による信頼性向上などのアプローチが検討されている。

第二に、多様な原料への対応技術の確立だ。地域により廃棄物の組成は大きく異なり、季節変動や経済活動の変化による組成変動も避けられない。これらの変動に対する適応技術として、AI(人工知能)による運転制御の高度化、原料性状のリアルタイム分析技術、自動調整機能の拡充などが開発されている。

第三に、長期運転における信頼性の向上だ。商用プラントでは年間8000時間以上の連続運転が要求されるが、現在の実証データは最長30時間程度に留まっている。長期運転データの蓄積、予防保全技術の確立、遠隔監視システムの高度化などにより、商用レベルの信頼性確保を図っている。

エピローグ:持続可能な未来への扉

開発者の想いと技術の未来

開発者の橋本芳郎氏(当社CTO)は、3.11の震災を契機に原子力発電の是非が問われる現状において、「いまだ漠然とした持続可能エネルギーや水素社会のイメージを、いまこそ具体的、現実的なものにする必要がある」と語っている。この言葉の背景には、20年以上にわたる技術開発への情熱と、持続可能な社会への強い使命感がある。

橋本氏の技術者としての出発点は、1973年のキャタピラー三菱(現:キャタピラー・ジャパン)での生産技術部勤務だった。大型建設機械の製造ラインの設計・運営を通じて培った現場感覚と実践的な技術力が、WTEシステム開発の基盤となっている。「机上の理論ではなく、現場で使える技術を」という信念が、この技術の実用性の高さに結実している。

2003年の会社設立から22年間、一貫してこの技術の開発に情熱を注ぎ続けてきた。数多くの失敗と挫折を経験しながらも、技術の可能性を信じて開発を継続してきた結果が、現在の高い技術水準に到達している。「廃棄物を資源に変える」という単純明快なコンセプトが、複雑な社会課題の解決につながっていることに、技術開発の醍醐味がある。

循環型社会の実現に向けて

WTEシステムは、単なる廃棄物処理技術を超えて、循環型社会の実現を可能にする統合技術だ。従来の線形経済(採取→製造→廃棄)から循環経済(採取→製造→使用→回収→再生)への転換において、中核的な役割を果たす可能性を秘めている。

廃棄物を「捨てるもの」から「エネルギー資源」へと発想を転換することで、資源の有効利用と環境負荷の削減を同時に実現できる。さらに、地域で発生した廃棄物を地域でエネルギーに変換することで、エネルギーの地産地消と地域経済の活性化を図ることができる。

この技術が本格普及した2030年代には、「ゴミ」という概念そのものが変化している可能性がある。有機性廃棄物は「バイオマス燃料」として認識され、プラスチック廃棄物は「ケミカルリサイクル原料」として位置づけられ、金属類は「都市鉱山」として価値を持つようになる。

地域自立と国際協力の両立

WTEシステムの普及により、エネルギーの地産地消が実現すると、地域の自立性が大幅に向上する。エネルギー自給率の向上、雇用創出、地域経済の活性化により、持続可能な地域社会の構築が可能になる。同時に、化石燃料への依存度が低下することで、エネルギー安全保障の強化にも貢献する。

一方で、この技術は国際的な技術移転により、グローバルな環境問題の解決にも貢献できる。特に、急激な経済発展により廃棄物問題とエネルギー問題を同時に抱える開発途上国において、WTEシステムの意義は極めて大きい。技術移転、人材育成、資金協力などを通じて、国際的な持続可能発展目標(SDGs)の達成に貢献することが期待されている。

静かな革命の始まり

私たちがこれまで当たり前だと思っていたエネルギーの在り方、廃棄物の処理方法、地域社会の姿が、この技術により根本から変わる可能性がある。それは派手な宣伝や大きな政治的変化を伴うものではなく、地域の現場から静かに始まる革命かもしれない。

神奈川県厚木市から始まったこの技術が、やがて世界中の地域社会に広がり、持続可能な未来社会の基盤技術となる日が来るかもしれない。廃棄物処理場から聞こえるのは、従来の燃焼音ではなく、静かな水蒸気の音と、生成される水素ガスのわずかな流動音だけ。その静寂の中で、新しい時代への扉が静かに開かれている。

WTE Technology-それは私たちの未来への希望の架け橋なのかもしれない。

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