なぜ低価格・安価にSAFを生成できるのか?

SAF製造コストを劇的に下げる:分別不要・オンサイト方式の経済性シミュレーション

世界が脱炭素に向けて走り出す中、航空業界は深刻なジレンマに直面している。

化石燃料への依存から脱却したい。しかし、持続可能な航空燃料(SAF)の製造コストは従来のジェット燃料の2~5倍。この価格差が、SAFの普及を阻む最大の壁となっていた。

ところが今、その常識を覆す技術が日本で実用化されようとしている。廃プラスチックという「厄介者」を、リッター約48円という驚異的な製造原価でSAFに変える。しかも、廃棄物処理費用を受け取りながら、である。

これは単なる理想論ではない。廃棄物処理会社Aと共に進められている実証計画の試算データは、この革新的なビジネスモデルが現実のものであることを証明している。

目次

双方向の収益構造が生み出す圧倒的な経済性

従来のSAF製造の最大の弱点は、原料調達コストの高さだった。バイオマスや使用済み食用油を集め、前処理を施し、工場まで運搬する。この一連のプロセスだけで、製造コストの大半を占めてしまう。

マイクロエナジー社約25年のWTEシステムにおける研究開発結果を本格的に事業化するために設立されたエナウムのWTE(Waste-to-Energy)システムは、この構造そのものを逆転させた。

廃棄物処理会社Aの事例を見てみよう。日量5トンの混合廃プラスチックを処理する設備において、年間の廃プラ受入収益は8,250万円に達する。1トンあたり約5万円の処理費用を受け取れるからだ。

そしてその廃プラから製造されるSAFの年間販売収益は約2億2,000万円。日量約2,300リットル、年間約76万リットルのSAFが、リッターあたり300円で販売される。

**つまり、原料を受け入れる段階で収益が発生し、製品を販売する段階でも収益が発生する。**この「双方向収益モデル」こそが、SAF製造原価約48円という数字を可能にする根幹なのだ。

※試算の数値や価格については状況や処理内容により変わる可能性があります。

「分別不要」が実現する革命的なコスト削減 低価格に

しかし、真の革新はここから始まる。

従来のリサイクルシステムの最大のコストは、実は「分別」にあった。廃プラスチックをPET、PE、PP、PSなど、種類ごとに分類する作業。人件費がかさみ、分別ミスによるロスも大きい。多くのリサイクル事業者が、この前処理コストに苦しんできた。

エナウムのガス化技術は、混合廃プラスチックをそのまま処理できる。

1000℃の高温、無酸素環境での二段階ガス化プロセス。この厳しい条件下では、プラスチックの種類は関係ない。すべてが分子レベルまで分解され、炭素含有率72%の原料から、60~66.5%という世界最高水準の水素濃度を持つ合成ガスへと変換される。

廃棄物処理会社Aの試算では、この分別不要システムにより、従来型のリサイクル施設と比較して前処理コストがゼロになる。

液相FT合成が切り拓く小規模・高効率の世界

SAF製造のもう一つの壁は、FT(フィッシャー・トロプシュ)合成プロセスの複雑さとスケールの問題だった。

石油メジャーが採用する気相FT合成は、確かに大規模プラント向きだ。日量100トン以上を処理する巨大設備では、高速反応による大量生産が可能になる。

しかし、その代償は大きい。反応が進みすぎると分子量が大きくなりすぎ、タール化が起こる。これを防ぐため、高価なクラッカー装置を導入し、触媒の劣化を抑えるため厳密な温度管理システムを構築する必要がある。設備投資は数百億円規模に膨れ上がり、運転には高度な専門知識が求められる。

エナウムが選んだのは、液相FT合成という別の道だった。

液相システムでは、反応が液体中で穏やかに進行する。触媒の効率は安定し、収率約60%を維持できる。分子量の過度な成長は自然に抑制され、クラッカーは不要。システムはシンプルで、小型でも高効率を発揮する。

この選択が、8億3,500万円という現実的な設備投資額を可能にした。

オンサイト方式が消し去る「見えないコスト」

もう一つ、見過ごせない革新がある。オンサイト方式、つまり廃棄物が発生する場所の近くでSAFを製造するというコンセプトだ。

従来型のSAF製造では、原料を遠方の大規模プラントまで運搬する必要があった。トラック輸送、中間貯蔵、在庫管理。これらの「見えないコスト」が、製造原価を押し上げていた。

廃棄物処理会社Aの計画では、既存の廃棄物処理施設に隣接してWTE設備を設置する。廃プラは発生現場から数キロメートル以内で処理され、SAFに変換される。運搬費は最小限に抑えられ、中間貯蔵コストはゼロだ。

さらに、ガス化プロセスで発生する余剰ガスは、その場で発電に利用される。年間75.9万kWhの電力が自家消費され、設備運転に必要なエネルギーの大半をまかなう。外部からの電力購入は最小限。水道光熱費は年間わずか72万円に抑えられる。

約3.4年で回収できる投資、15年間続く利益の流れ

数字は雄弁だ。

日量約5トンの場合、

設備投資総額:約8億3,500万円

  • 廃プラガス化設備:6約億6,800万円
  • FTプロセス+発電設備:約3億1,400万円
  • 造成・建屋建設費:約1億5,700万円
  • 量産効果による削減:約1億4,000万円

年間収益:約3億1,000万円

  • SAF販売収益:約2億2,000万円
  • 廃プラ受入収益:約8,000万円

年間営業利益:約1億9,000万円

キャッシュフローは年間約2億4,000万円、投資回収期間はわずか約3.4年。

15年の設備寿命を考えれば、初期投資を回収した後、11年以上にわたって利益を生み出し続ける計算になる。

※試算の数値や価格については状況や処理内容により変わる可能性があります。

世界が注目する「約48円」の意味

SAF製造原価約48円という数字は、単なるコスト削減以上の意味を持つ。

国際民間航空機関(ICAO)は2050年までに航空業界のカーボンニュートラル達成を目標に掲げた。日本政府もSAF使用率を2030年に10%まで引き上げる方針だ。しかし、現在のSAF価格では、この目標達成は不可能に近い。

エナウムの技術は、価格競争力という最後の壁を打ち破る可能性を示している。

分別不要の前処理システム。液相FT合成による小型高効率プロセス。オンサイト方式による運搬コスト削減。双方向収益モデル。これらすべてが組み合わさって初めて、48.3円という革新的な数字が実現する。

廃棄物処理会社Aの試算は、まだ実証段階の数字だ。しかし、それは同時に、検証可能な、再現可能な、拡張可能な数字でもある。

日本中の廃プラスチック。世界中の廃棄物。それらが「ゴミ」から「空を飛ぶ燃料」に変わる日が、もうすぐそこまで来ている。


根拠資料: 本記事の試算データは、廃棄物処理会社Aのケーススタディとして、日量約5トンの混合廃プラスチック処理設備における詳細な経済性分析が実施されています。

※試算の数値や価格については状況や処理内容により変わる可能性があります。

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